寸法公差と幾何公差
製造業において、部品の寸法や形状は設計通りに作られることが理想ですが、実際には加工精度の限界により、多少の誤差が生じます。
この誤差を管理するために「公差」が設定されます。
公差には大きく分けて「寸法公差」と「幾何公差」の2種類があります。
寸法公差:サイズの許容範囲
寸法公差とは、部品の長さ、幅、直径などの寸法に対して許容される誤差の範囲を定めたものです。
例えば、ある部品の設計寸法が100mmであり、寸法公差が±0.1mmと設定されている場合、実際に製造された部品の寸法が99.9mmから100.1mmの範囲内であれば許容範囲内となります。
幾何公差:形状や位置の許容範囲
幾何公差とは、部品の形状や位置関係の誤差を規定する公差です。
幾何公差を使うことで、2つの面の平行度や垂直度、2つの軸の同軸度など、寸法公差だけでは管理しきれない形状の精度を保証できます。
また、幾何公差では基準面(データム)を設定できるため、寸法公差よりも基準面と寸法の関係が明確になり、第三者にも理解しやすい図面を作成できます。
公差解析の基礎
公差解析とは、部品の公差が組み立て後の製品にどのような影響を及ぼすかを評価する手法です。
代表的な解析手法として「ワーストケース法(最悪値の積み上げ法)」と「二乗和平方根法(統計的公差解析法)」があります。
ワーストケース法
ワーストケース法とは、各部品の公差が最大許容値に達した場合の合計値を計算し、設計基準を満たすかどうかを評価する手法です。
この方法は、すべての部品が最も不利な方向に公差範囲内で変動した場合でも、製品が機能することを保証するため、安全性が高いというメリットがあります。
しかし、その分厳しい公差設定が必要となるため、加工コストが高くなりがちです。
二乗和平方根法
二乗和平方根法は、各公差が独立した確率分布に従って変動することを前提に、統計的な手法を用いて合成公差を算出する方法です。具体的には、各公差の二乗を合計し、その平方根を取ることで全体の公差を求めます。
この手法のメリットは、最悪値の積み上げ法に比べて、より現実的な公差範囲を設定できる点です。そのため、加工コストを削減しながらも、製品の機能を確保することができます。
ただし、確率的な手法であるため、稀に許容範囲を超えるリスクがある点には注意が必要です。
例題:実際の計算方法
3つの部品を直列に組み立てるとします。
それぞれの部品の長さが100±0.3mm、90±0.2mm、80±0.1mmの場合、組み立てた時の最大長さと最小長さを求める。
手法 | 設計値 | 公差 | 結果 |
---|---|---|---|
ワーストケース法 | 100+90+80 =270 | 0.3+0.2+0.1 =0.6 | 270±0.6mm |
二乗和平方根法 | √(0.32+0.22+0.12) =0.4 | 270±0.4mm |
おわりに
寸法公差と幾何公差は、製品の品質や組み立て精度を左右する重要な要素です。
寸法公差だけでは制御できない形状や位置の誤差を幾何公差で補うことで、より高精度な設計が可能になります。
また、公差解析の手法を適切に選択することで、過剰な精度要求によるコスト増を防ぎつつ、必要な機能を確保できます。
ワーストケース法は安全性を重視する一方でコストが高くなりがちですが、二乗和平方根法を活用すれば、より現実的な公差管理が可能です。
今後、「幾何公差の種類」「公差解析の事例紹介」の記事を作成予定なのでご期待ください。