往復型容積式ポンプのガイド:プランジャとピストン、どう選ぶ?

要素部品
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容積式ポンプとは何か?

容積式ポンプの概要

ポンプは、流体(液体や気体)を吸引したり排出したりする装置で、「容積式ポンプ」と「非容積式ポンプ」の2種類に大別されます。

容積式ポンプは、内部に空間(容積)が設けられており、容積を変えることで陰圧や陽圧を生み、流体の吸い込みや押し出しを行います

容積式ポンプの動き
容積の変化により吸引・排出ができる

往復型と回転型

容積式ポンプは、その動作メカニズムに基づいて「往復型容積式ポンプ」と「回転型容積式ポンプ」の二つに分けられます。

往復型の特徴

往復型容積式ポンプは、ピストンやプランジャがシリンダ内で前後に動いたり、ダイアフラムが凹凸に変形することで、内部の容積を変化させます(詳細は後述)。

容積が増減することで陰圧や陽圧が生まれ、流体の吸引と排出が行われます。

このタイプのポンプは、高圧を生成できるため、水の供給やオイルの注入など、圧力が必要な用途に適しています。

回転型の特徴

回転型容積式ポンプは、ギア、スクリュー、ローブ、ベーンなどの回転する要素を使用して容積を変化させます。

これらの要素が連続的に回転することで、ポンプ室内の流体を絶え間なく押し出します。

回転型は滑らかな流れと一定の圧力を提供するため、食品処理や化学薬品の輸送など、均一な流量が求められる場面で優れた性能を発揮します。

往復型容積式ポンプの種類と特徴

往復型容積式ポンプの主要な種類として、ダイアフラムポンプ、ピストンポンプ、プランジャポンプがあります。

ダイアフラムポンプの特徴

ダイアフラムポンプは、柔軟な膜(ダイアフラム)を凹凸に変形させることで内部の容積を変化させ、流体を移動させる仕組みを持つポンプです。ダイアフラムは、シャフトによる物理的な動きや、空圧源を利用した圧力によって変形します。

接液部(ダイアフラム)と駆動部が完全に隔離されているため、液漏れのリスクが非常に少なく、安全性が高いのが特徴です。この構造により、腐食性のある化学薬品や食品用の液体の輸送にも適しており、化学工業、食品産業、さらには水処理など幅広い分野で利用されています。

ピストン、プランジャポンプの特徴

ピストンポンプとプランジャポンプの違いについては後述するため、ここでは両者に共通する特徴をご紹介します。

ピストンポンプとプランジャポンプは、どちらもシリンダと呼ばれる中空の部品に、ピストンまたはプランジャと呼ばれる棒状の部品を挿入した構造を持っています。

これらのポンプでは、ピストンやプランジャがシリンダ内で往復運動を行うことで、内部の容積を変化させ、陰圧や陽圧を利用して流体を吸引・排出します。

そのため、水供給設備や油圧システムなど、高い圧力が必要な用途で活躍します。

また、容積を直接制御する仕組みのため、精密な流量制御が可能で、一定の流量を安定して保つことができる点も大きな特徴です。

ピストンポンプとプランジャポンプの違い

構造の違い

「シリンダと呼ばれる中空の部品に棒状の部品(ピストンまたはプランジャ)を挿入した構造」という点では共通ですが、シリンダとのシール方法が大きく異なります。

ピストンポンプシール部品(ピストンリング)がピストン側に固定されており、ピストンの往復運動ともにシール部品も移動します。ピストンポンプの場合、シール部品はシリンダ内壁と擦れます。

ピストンポンプの構造
ピストンポンプの内部構造:シール部品はピストンに固定

プランジャポンプシール部品(プランジャシール)がシリンダ側に固定されており、プランジャが往復運動してもシール部品は移動しません。プランジャポンプの場合、シール部品はプランジャと擦れます。

プランジャポンプの構造
プランジャポンプの内部構造:シール部品はシリンダに固定

両者のメリットとデメリット

両者のメリットとデメリットは以下の通りです。

ピストンポンププランジャポンプ
1.流量の大きさ
(大きい)

(小さい)
2.流速の精密度
(ばらつきやすい)

(非常に安定)
3.耐圧性
(低い)

(高い)
4.耐摩耗性
(摩耗しやすい)

(優れている)

1. 流量の大きさ(ピストン優位)

ポンプの流量は、往復運動する稼働部の径とストローク量で決まります。

ストローク量が同じと仮定すると、ピストンポンプではシール部品の径(≒シリンダ内径)、プランジャポンプではプランジャ径に依存します。そのため、一般的にピストンポンプの方が流量が大きくなります。

一方、同じストローク量で少量を流せる分、流量の精密さではプランジャポンプの方が優れています。

2. 流速の精密度(プランジャ優位)

シリンダは樹脂成形やダイカストで製造されることが多く、これらの成形部品には抜き勾配が生じるため、内径の均一性が制限されます。ピストンポンプの流速はシリンダ内径に影響されるため、流速がばらつく可能性があります。抜き勾配をなくす二次加工も可能ですが、部品コストが上がるというデメリットがあります。

一方、プランジャポンプの流速はプランジャ径に依存します。プランジャは旋盤加工や研削加工などの切削加工で製造されるため、径を均一に仕上げることが可能です。そのため、プランジャポンプは精密な流量制御が求められる用途に適しています。

3. 耐圧性(プランジャ優位)

ピストンポンプの耐圧性はシール部品とシリンダの密着具合に依存します。シリンダは樹脂成形やダイカストで製造されることが多く、これらの成形部品には抜き勾配が生じるため、シール部品との間に隙間ができやすくなり、耐圧性が低くなります。

一方、プランジャポンプの耐圧性はシール部品とプランジャの密着具合に依存します。プランジャは旋盤加工や研削加工などの切削加工で製造されるため、径を均一に仕上げることができ、シール部品との間に隙間ができにくいです。
また、ピストンポンプで使用されるシール部品(Oリングなど)よりも、プランジャポンプで使用されるシール部品(プランジャシール)の方が構造的に耐圧性が高いです。

4. 耐摩耗性(プランジャ優位)

構造上、ピストンポンプはシール部品とシリンダ、プランジャポンプはシール部品とプランジャが擦れます。

シリンダの方が径が太く、接触面積が大きいため、シール部品への負荷はピストンポンプの方が大きいです。したがって、耐摩耗性はプランジャポンプの方が優れています。

おわりに

容積式ポンプは、液体を正確に移送するための重要な装置であり、その中でもピストンポンプとプランジャーポンプは幅広い分野で活用されています。

本記事では、それぞれの構造や特徴、用途における違いについて詳しく解説しました。

これらのポンプを選ぶ際には、求められる流量や圧力、耐久性、そしてメンテナンス性を考慮することが重要です。どちらのポンプも一長一短があり、使用環境や目的に応じて適切な選択を行うことで、設備全体の効率と信頼性を向上させることができます。

本記事が、容積式ポンプの理解を深め、適切な機器選定のお役に立てば幸いです。

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